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2013年9月12日木曜日

神のみぞ知るセカイ FLAG242 「テンペスト」 感想

天理の女神力が留まることを知らない香織編(?)。
今までもヒロインを攻略することなく終わったシリーズはいくつかあったがここまでゴールが見えないのは初めてだろう。
むしろヒロインを攻略しているというよりも、桂馬が自身の内面と向き合っていある或いは天理に攻略されていると言っても良いのかもしれない。

タイトルはテンペスト。
はじめはタイトルがテーマから離れたので別のシリーズに入ったのかとも思ったが、シェイクスピアのロマンス劇に同名のものがあるのでそちらからだろう。
それほど深く状況にかけずに、『嵐』の意味でのテンペストと考えるのが自然か。
ただ一点時を越えて復讐をしようとした男は最後の運命を観客に委ねる。
観客とはだれか、逆行する悪魔かそれとも慈愛に満ちた人間か。




そんなこんなで止まらない天理無双。



もう天理がメインヒロインでいいんじゃないかな!
っていうか完全メインヒロインだよね!

6歳ということを考えると異常としてか言えない精神性なのだが、細かいことはいい。
だって天理は女神だから。





そんな天理ちゃん(6歳)に躊躇なく椅子を掲げる香織さん。
この人の精神も普通じゃない。

邪魔されたら容赦なくぶちギレる。
しかも沸点がとても低い。凄く低い。
小6の香織さんが小1の天理を椅子で殴ろうとするとか怖すぎる。




とはいえそう簡単にバイオレンスなことにはなりはしない。
なんたって天理には頼れる味方がいるのだ。




その名はエルシィ


・・・いやあんまり頼れないし心強くないな。
日常生活の範囲であれば優秀な家政婦妹だが、攻略関係はポンコツである。
まぁポンコツコアクマっぷりが癒しであるしやるときはやる子なので問題はない。

さすがはマスコットだ。




見えない力で椅子を弾き飛ばされて驚いたのもつかの間、香織はとてつもない変り身の早さを見せる。

不思議な力で椅子が弾き飛ばされたとなればもう少し慌てても良いものだが、理解できずとも状況を冷静に観察する。
そして自分を慕う下級生が現れれば即座に”優しいお姉さん”として振舞っている。

香織は桂馬のことを自分と同じタイプの人間と評したが、間違いなくそうだろう。
子供らしいとからしくないとか他人を見下しているとか以前に、現実というセカイの捉え方や思考回路が常人とは違っている。

出会い方さえ違えばもしかするとこれ以上とない理解者になっていたかもしれない。
あるいは互いに強い同属嫌悪を抱くか。




香織が劇の準備へ行ったので、天理は桂馬に会おうとするがドアが開かない。
鍵がないのに開かないのは既に中でリセットが始っているからなのか。

しかし廊下には何の変化もなく、美術室?が荒れているところを見るとリセットは限定空間を切り取って行われるのだろうか。




桂馬に出てきてという天理だが、桂馬はそれを拒否する。
拒否の仕方が「やだ。」の一言だけなのはそれだけ素なのだろう。

この桂馬の言葉は詭弁である。
危ない目に合わせたくないというのは嘘ではないだろう。
しかしどのみち天理は女神を宿し、危険な道を歩まざるを得ない。
それは避けられない決定事項であり、避けることを未来が許しはしない。

そんなことは桂馬だって分かっているし最終的にはそうするだろう。
それでもこれ以上天理を利用したくない。その結果傷つけてしまうかもしれないのが怖い。
だから桂馬は天理と協力せずに一人で進めるルートを探そうとした。




ところが嫌だと言われて諦める天理ではない。
天理は引っ込み思案で人見知りで消極的だ。
しかし頑固なのだ。

それは10年後を見ていれば良く分かる。
聞き分けはいいが譲れない一線に関しては頑なに譲らない。
鮎川天理とはそういう娘だ。



でぇ―――い!!


今回エルシィ大活躍だな。 
あえて何も言うまい。







なんかすごいことになってる!


扉開けたら異空間だよ!異次元だよ!
球のリセット能力すげーな。
なんで今まで気づかなかったんだ?
最後のリセットだから大々的に何か起こっているのか、それとも状況が特殊なのか。

はたまたただの演出上の都合なのか。






桂馬はリセットを受け入れている。
その上で自分ひとりでなんとかしようと考えている。
一見ループというシステムを有効活用しているように見えるが本当にそうだろうか。

桂木桂馬の攻略は常に全力だった。
情報を集め、想定される展開を予想し、イベントを起こし、フラグを管理してエンディングを目指す。
失敗しそうになったことはある。
どん詰まりになったことだってある。
それでも諦めなかった。
後でやり直しがきくとしても投げ出さなかった。

落とし神は攻略を投げ出さない、ヒロインを助けることを諦めない。 
常にそこにあるものだけで勝負してきた。

神が、今崩れ落ちようとしている。





そんな桂馬に天理は何を見たのか。







んだ。



うぇえええええええええええっ!?




跳んでるよこれ。
どう見ても跳んでる。
完璧に跳んでる。




桂馬のセリフが全てである。
躊躇なく異空間にジャンプできる天理はちょっとやばい。
異常としか言えない精神とかいってたけどそんなレベルじゃない。
完全に神の領域。




この発言から桂馬の性格が良く分かる。
リセットされ自分がこの世界から消えてしまっても、自分以外の世界はそのままの形で進むと思っている。
ループものにおいては、主人公の主観で物語が進むために主人公以外の”ループしなかった世界”について考慮されることはあまりない。
目的のために今を諦めて過去に戻る、それが多くの時間逆行だ。
そのときに主観以外のものは切り捨てられ、諦められてしまう。

確かに桂馬も天理を利用した攻略を諦めたが、自分以外の世界を切り捨てていなかった。
天理には危ないから夜まで隠れていろと伝えている。
リセットされてしまったらそれは未来に繋がらないセカイ。
自分にはもう関係なくなるし、何が起こるか知ることは出来ない。
心が折れていても切り離されていくセカイに残す絆を気にかけていた。

無意識かもしれないし、そこに深い意味はないのかもしれない。
それでも桂馬が根っこの部分で本当に優しい人間であることは伝わる。


同時に『こっち来たら消えてしまうぞ』という言葉で、リセットが時空間に対して行われると推測しているのも分かる。
まぁもう空間自体が完全におかしくなっているので他には考えづらいが、効果が桂馬にしか及ばないのであれば天理の心配をする必要はない。




女神である。


桂馬の様子を見て天理は泣いていると思った。
いつからそう思っていたのだろうか。
異空間に漂う教室の桂馬を見たときだろうか。
それとも屋上から桂馬の背中を見かけたときだろうか。

どちらにせよ、桂馬が泣いているかと思ったから天理は飛び出した。
危ないとか怖いとかそんなの思いもしなかったのか、それとも関係なかったのか。

桂木桂馬は泣いてはいない。少なくとも、表面的には。
しかし心はどうか。
自分のしてきたこと、自分のしていくこと、それに耐え切れず折れそうだった心は、泣いていたのか。

天理は何も知らない。




だから話すのだ。





もはや登場人物のパワーバランスは壊滅的である。
どうあがいても天理一強状態。
このままだと他のヒロインには勝ち目はない。
勝ち目がないどころか、比較対象にもならない。
以前は第二の主人公格であったハクアや、メタ設定で勝る歩美・ちひろあたりは対抗馬として機能しうる状態だったがこれでは勝負にならない。
もっともそれは物語におけるヒロインとしてであり、 恋愛事情としてのヒロインではないが。

正直なところ桂馬は相当ネジがぶっ飛んでいるキャラだと思っていたが、天理も負けず劣らずネジが吹っ飛んでいた。
他人のために躊躇なく飛び出せるこの2人のメンタルは人間の域を超えている。
さらに天理は女神篇のバスストップ時に桂馬の嘘を見抜いていたが、今回のことで桂馬の心理状態を察することができるのが分かった。
桂馬限定なのか他人の心の機微に鋭いのかは分からないが、間違いなく桂馬に最大級の影響を与えることになるだろう。


そして今回気になったコマが1つ。


天理のセリフ(だと思われる)だが、『いつも』と『そう』がなにを挿しているのかが分からない。
次回の”おはなし”で分かるだろうか。

折角おはなしするのだ、できればここからリセットを回避する方向に動いて欲しい。

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