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2013年9月29日日曜日

神のみぞ知るセカイ 女神篇 FLAG12.0 【初めて恋をした記憶】 感想


女神篇最終話。

ここのまで来たのであれば多く語ることはない。
状況は逼迫しているが、背景なヴィンテージの方々はカットだカット。




透明状態でデート歩美を探す2人。
非常に便利な機能だが、手を離すと互いに見えなくなってしまう。




道中桂馬の胸ポケットに何かが入っているのに気づいたちひろ。
桂馬にそれと気づかせずにソレを回収する。




桂馬が胸ポケットにしまっていたソレは、前夜祭の日にちひろが渡したギターピックだった。

何故桂馬が今これを持っているのか、その可能性はいくつか考えられる。
でもその理由をちひろは問いただしたりはしない。




歩美の姿を確認した桂馬は、ちひろから手を離す。
ここから先は攻略であり、向かい合わなければならない相手はちひろではなく歩美だ。

しかし桂馬の背中を見送るちひろの表情はどこかさびしそうにしている。




ちひろが歩美に話したのは桂馬が”ゲームのように歩美を攻略しようとしている”ことだけではなかった。
何か事情があって必死になっている。
だから桂馬とちゃんと話して、どうするのはか自分で決めるのだと。




かのんが挿され、女神を探すところから始った三角関係。
その結末が、3人の見つめる先がこの図に表れている。気がする。




「 もう降参する・・・もう引き出しは尽きた。歩美には何もかも話す」


ちひろに説得されたためか、或いは本当にゲームとしての引き出しは尽きたのか。
桂馬は全てを話すことを歩美に約束する。

 


「ただし、条件がある。今答えるのは一つの質問だけだ」


しかしただでは話さない。
今答えるのはたった一つの質問にだけ。
その条件は絶対に変えない。
条件が飲めないのであればここでお別れだと。

結局のところ今全てを話すわけにはいかない。
事情を説明すればきっと歩美は協力してくれるだろう。
しかしそれではダメなのだ。
女神が力を取り戻し、ヴィンテージが止められるところまで持っていかなければならない。
だからは一つだけ答え、残りは全てで答える。
それが条件。




「質問。私のこと、好き?」


逡巡の末、歩美は質問することを選ぶ。
たった一つのことしか聞けないのであれば、何よりも大切なことを聞く。
それは何が起こっているかではなくて。
それは何をしようとしているかではなくて。

ただ自分のことが好きなのかどうか。
歩美が一番聞きたい、桂馬の気持ち。




「・・・好きじゃない」


桂馬は恐らく、この質問が来ることを予想していたのだろう。
質問できるのはたった一つだけ、この条件を歩美が飲まないとは思っていない。
条件を飲まずに、何も知らないままで別れることが選択できるならばバンドのことで悩んだり呼び出しに応じたりはしない。
そして歩美が何が起こっているかよりも桂馬の気持ちを聞きたがっていたことは高原家でのやりとりからも分かる。

桂馬は包み隠さず本心を伝えることを選ぶ。
このあたりは原作者のブログでも解説されているが、桂馬は誰のことも好きではない。
全ては攻略のためにやっていたことだ。

普通に考えればここで好きではないことを伝えるのはマイナスになるとしか思えない。
しかし歩美の場合は桂馬がゲームのように攻略をしていることを知っている。
だからこその高原家でのやり取りであり、 この質問なのだ。
桂馬にできることは上辺の芝居を打つことではなく、本心を伝えること。
そうやって誠意を伝えることだけだ。




歩美が期待していた言葉はただ一言「好き」だ。
桂馬に何かしらの事情があるのは分かっていたし、ゲームのように攻略されていたのも知っていた。
桂馬の全てを信じることなんて到底出来ないだろう。

でも、それでも、好きでいて欲しかった。




何かがあって必要なら力を貸すという歩美に対して、必要ないと切って捨てる桂馬。
桂馬にって攻略はヒロインを恋に落とし、ヒロインを助けることだ。
ヒロインに助けられる展開を望んではいない。

そして桂馬の「好かれるためにやっているわけじゃない」というセリフはなんとも皮肉的だ。
攻略のエンディングの条件として(例外はあるが)桂馬はヒロインを恋愛している状態に持っていかなければならない。
それは桂馬のことを好きになるということだ。
しかし恋をした桂馬は、本当の桂馬ではなく”攻略のために芝居をしている桂馬”なのだ。
そこには素の桂馬というものは存在しておらず、桂馬自身も見せようとしていない。




「ボクはただ・・・エンディングを目指しているだけだ。見返りや助けなんていらない。この責任は・・・他の誰にも渡さない!」




「これが・・・ゲーマーの愛だ!」


桂馬は自身が”落とし神”であることに誇りを持っている。
ヒロインを攻略することとは、ヒロインを助け出すこと。
そしてそれは自分自身の力で為すこと。

たとえそれが現実であっても、桂馬の為すべきことはゲームと同じ。
ヒロイン達を愛し、自分の力で幸せなエンディングへと導く。
そのために全てを捧げる。
捧げられるからこそ神となった男。




「・・・歩美、愛してる」


好きではなく愛してる
桂馬セリフの流れからして、桂馬自身が歩美を女性として愛しているのではなく、ゲーマーとしての桂馬が歩美を攻略ヒロインとして愛してるということだろう。
歩美も額面どおりの意味で受け取っていないだろう。

しかし愛してると言われて悪い気はしない。
特に好きじゃないからの愛してるだ。
歩美に桂馬の言ったことが十全に理解できるとは思えないし、桂馬もあえて混同するような言い方をしている。




ちひろに背中を押されて歩美は前に進むことに。
桂馬もついてきてくれ、と思っているあたり賭けの部分が大きかったことが分かる。




そしてそのままエンディング、結婚式へ。
もはや完全な茶番である。

まぁそんなことはお互い分かった上でのことなので気にしてもしょうがない。




「私の気持ちは、私が決めるよ!自分で、自分で決めて・・・桂木が好きなんだ!・・・それが分かったら私と、結婚しなさい!!」


自分の気持ちは自分が決める。
たとえこの恋心が”攻略”によって作られた偽物だったとしても、自分で考えて決めれば、それは本物になる。
偽物だった攻略は、ただのきっかけにしかすぎない。

それにしても男らしいプロポーズである。




そしてキス。
原作でもそうだったが、これは完全に1話と同じ構図のキス。
神のみはこういう目立つものからよくよく見ていかないと分からないものまで対比が多くある。
意識しながら見てみると面白いかもしれない。




女神復活からのダイジェストバトル!
ディアナさんの翼が生えた理由は事情により省略されました。
ここに関しては原作でもまだ分かっていない部分なのでしょうがないのか。

アニメオリジナルで補完してくるかとも思ったけれど、カットはあっても原作の設定に矛盾するようなことはしていないので続編の期待ももてるということか。


しかしここは視聴者完全に置いてきぼりである。
まぁ原作通りだからしょうがない。
原作でなら灯=リミュエルの話もある程度描かれているからまだいいが、アニメだとほぼそれがないので本当にどういうことだ、だ。




ちひろは歩美の中にあった何かがどうなったかが”見えなかった”という。
それが本当なのかどうかは分からない。
羽衣には目隠し機能があるので見えない可能性は十分にあるが、女神の輪と翼については詳細に語られていないので分からない。

本当に見えなかったのかもしれないし、あえてそう言ったのかもしれない。




桂馬とちひろはことの成り行きを最後まで見ることなく帰路に着く。
その場に残って事の顛末を最後まで見たほうが確かに良いのかもしれないが、もう2人にできることは何も無い。
特にちひろは完全に無関係なのだ。




さりげなく仕事っぷりをアピールするディアナさん。
この人?いろんなところで駄女神だの卑し神だの言われているが、実際には女神の中で一番仕事をしている。
愛されているが故の愛称ということだろう。

とりあえず普通にビーム撃っててびっくりした。




ここから先を語るのは無粋ではないかと思ってしまう。
玄関先で足をぶらぶらさせながら待ったり、意味も無く「朝だ・・・」と呟いたりと前半のカット&圧縮っぷりからは考えられない間を取った演出をしている。

全てはここからのため、ということなのだろう。




改めて今回のことの礼を言う桂馬。
ちひろの反応でも分かるが、桂馬が礼を言うことは滅多にない。
滅多にないというか今まで一度も無かった。
少なくとも、面と向かって本心から言ったことはない。




形はどうあれ最終的にちひろは桂馬の攻略に手を貸すこととなった。
それは桂馬が必死で、本気だということが感じられたからだろう。
例えそれが親友を”攻略する”というおよそ誠実さの欠片もない行為だったとしても、そこに何かあるのだと感じ取った。
事情は分からなくても、懸命な桂馬を見て、その桂馬が好きな歩美を見て、自分に出来ることをしようとした。




だからこそ、桂馬がなぜ自分とデートをしたのかが分からなかった。
何の理由も無く桂馬がデートなどするはずがない。
理由があったとしても、桂馬が攻略しようとしていた相手は歩美であって自分ではない。
歩美の持つ、特別な何かが必要だった。
そのために桂馬は歩美を落とそうとしていた。
ちひろが知っているのはたったそれだけのこと。




だから、もしかすると。




もしかすると、自分にも何か特別ものがあって、桂馬がそれを必要としていて、自分に近づいてきたのではないか。




屋上での言葉は何か事情があっての言葉なのかもしれない。
守ってくれたのには理由があるのかもしれない。

そんなちょっとした、普通じゃない不可思議な繋がりが、自分と桂馬の間にはあるのかもしれない。
あってほしい。




しかし桂馬の口から出たのは、淡い希望を打ち砕く、はっきりとした否定の言葉。
関係ない。
それ以上でも、それ以下でもない、ただ無関係だったという事実だけ。

細かい事情も、そこに至るまでの経緯もない結果だけの言葉。
優しくもなく、冷たくもなく。





ちひろは一度咽から出そうになった言葉を堪えて悪態をつく。
それはそのまま言葉通りの意味ではないはずだ。
本当はあふれ出しそうな思いをもう一度ぶつけたかったのではないか。
本当のことを、桂馬の言葉で、本心を伝えて欲しかったのではないか。
例えそれが拒絶だったとしても。

それでも口に出せたのは精一杯の強がりと、悪あがき。




桂馬がその言葉をどう受け取ったかは分からない。
自身を”人の気持ちが分からない”と評する桂馬は、何を感じたのか。

ちひろの言葉をそのまま受け入れるしかなかった。




これが2人の物語が終わった。
桂馬がちひろに全てを語る日はきっと来ないだろう。
ちひろも問いかけるようなことはしないだろう。




桂馬はライブを見に行くことを約束する。
何てことのないセリフだけれども、きっと今の桂馬にできる精一杯の誠意だったのではないか。
これ以上巻き込むことはできない。
だから説明もフォローもできない。するつもりもない。
そんな桂馬のありったけ。




「バイバイ」


別れの言葉が決別の証。
ただ一言、今までの自分の想いを振り切るために。




メンバーが揃わぬままステージに上がったちひろの足取りは軽い。
自棄になったわけではなく、ただ受け入れた。




手に取ったのはあの日、桂馬に渡したピック。
前夜祭に同じものを持っていけばいいことがある。
本気で信じたわけではないけれども、そこにあった想いは本物だ。

そしてソレは再びちひろの手の中に戻ってきた。
桂馬が何故ピックを持ち歩いてきたのか。
単に入れたままにしていて忘れていたのかもしれない。
特別な思いがあったのかもしれない。
それはもう誰にも分からない。




遅刻してきたメンバーにかけるちひろの言葉は晴れやかなものだ。
突飛な格好をした歩美にも軽口を叩いて、小さく背中を押してやる。




自分で決めたんでしょ。
その言葉はきっと自分のための言葉でもある。




自分の気持ちは、自分で決めた。
だからそこに後悔は無い。




さらにかのんがライブに乱入。
正直トドメ挿しにきたと言われるのも分からなくはないタイミング。
思えばちひろが真剣にライブに取り組むようになったのはかのんとステージで会おうと約束したからだ。
その約束がここで果たされる。

そして重要なのはかのんのヘソとお腹。
エロいとかそいうのじゃなくて、そういうのもあるけれど、 女神篇開始時にかのんはヴィンテージ襲撃されて刺されている。
女の子(特にかのんはアイドルなので尚更)にとっては一生残る傷跡ができてしまうことは非常に由々しき問題だ。
しかしここで刺された痕が残らず完治しているとハッキリ見せてくれることで安心できる。
まぁ余談ですが。




ちひろは関係ない。
それはちひろには特別な何かが、女神がいなかったということ。

そして桂馬が探していたのは他ならぬ女神達。
そのために桂馬は再攻略という”恋愛”をする手段を取った。



 

女神を宿したヒロイン達は、攻略の記憶を覚えている。




それは今回のことが”初めて”ではなく、続きだったということ。




そしてこれから先も、不可思議な繋がりがあるということ。




必要とされた特別なもの。




自分にはなかった輝き。




彼女達はまだ、桂馬に恋をしている。
まだ終わっていない物語。




終わってしまった自分達の物語。




想いは届かなかった。
それでもきっと恋をしたことは無駄ではない。
辛くて、悲しくて、痛くて、失恋したこの瞬間はきっと心に傷跡を残すだろう。
でもそれはきっと乗り越えていける。

ちひろは初めての恋を失っている。
そしてまた同じ人に初めて恋をした 。
それは上手くいかなくて、失恋の思い出となってしまった。
でも今度は忘れない。
いつか歩き出して、振り返ったときに”初めて恋をした記憶”として心に刻まれている。

その想いは、思いでは女神達にも負けていない。
その輝きはちひろだけのもので、ちひろにしか出せないものだ。
今はまだ気づかないかもしれない。
でもきっといつか、立ち直って歩き始めて、振り返ることができるようになる。
そんな強さをきっと持っている。


そのときは笑って思い出せるはずだ。
切なくて、甘酸っぱくて、輝いていた初めて恋をした記憶を。








神のみぞ知るセカイ 女神篇のアニメはこれで終了です。
目的は果たされ、世界を守ることができた、きっとハッピーエンドな物語。
それでも全てが幸せな結末を迎えたわけではない。




桂馬の流した涙の意味はきっと受け取る人によって違うでしょう。
原作を読んでいるか、読んでいるなら単行本でなのかそれとも連載を追いかけているかでも違うと思います。
これについては語ろうとすると凄く長くなりそうなので別の機会に(あるのか?) 。

ただ桂馬の目的は「全てのヒロインを幸せなエンディングへと導くこと」であったのに、ただ一人ちひろをエンディングへと連れて行くことが出来なかった。
桂馬のやり方がまずかった部分もあるし、 どうしようもなかった部分もある。

桂馬はちひろを傷つけてしまったこと、自分の理想を為しえなかったことに強い後悔の念を抱いている。
それは桂馬が初めて見せた人間的な感情であり、今までの物語を通して最も変わってきた部分だ。


桂木桂馬というキャラクターは神であり、人間ではなかった。
その神が女”神”を探す過程を経て人間へと変わっていく物語。
そして神を殺したのは同じ”神”ではなく、平凡なただの人間だった。

これからも人間となった桂馬の物語は続いていく。
その辿り着く先がどこなのか非常に楽しみである。



だからこれからもアニメ化してください。

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